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2006年12月11日
株式会社日立製作所
株式会社ルネサス テクノロジ
相変化メモリの低電力動作と製造の安定性を同時に実現する
メモリセル技術を開発
五酸化タンタル界面層を用いた新しいメモリセル構造を考案
株式会社 日立製作所(本社:東京都千代田区/執行役社長:古川 一夫/以下、日立)と株式会社ルネサス テクノロジ(本社:東京都千代田区/会長&CEO:伊藤 達/以下、ルネサス テクノロジ)は、このたび、相変化メモリの低電力動作性能を維持しつつ、安定した製造を可能とするセル技術を開発しました。
今回開発したセル技術は、MOSトランジスタに接続するプラグ*1と相変化膜の間に五酸化タンタルの界面層を形成し、かつその厚さを最適化したものです。本構造の相変化メモリセルを試作し、電源電圧1.5Vにて、100µAの電流による書換え動作を確認しました。さらに、五酸化タンタル界面層と相変化膜との良好な接着性により、メモリセル製造の安定性をより高めることも可能となります。
相変化メモリは、電流により発生するジュール熱によって、膜の電気抵抗が異なるアモルファス状態*2(高抵抗)と結晶状態(低抵抗)に変化することを利用し、その電気抵抗の違いを“1”と“0”の情報として、記憶と読出しを行う不揮発性のメモリです。既存の不揮発性メモリと比較し、高速な書込みや読出し、高い書換え耐性、および低コストでの製造が可能で、集積化に有利という特徴から、次世代の高集積オンチップ不揮発メモリとして期待されています。
従来、相変化メモリでは、リセット(アモルファス化)時に、相変化膜の材料を融点以上に加熱するため、1mA以上の大電流が必要でした。そこで、日立とルネサス テクノロジは、昨年、GeSbTe(ゲルマニウム・アンチモン・テルル)に酸素を添加した相変化膜を開発し、電源電圧1.5Vにて、書換え電流が100µAの低電力メモリセルの試作に成功しています。しかし、相変化膜で発生した熱が、プラグ経由で逃げやすい構造のため、リセット時の相変化膜の温度上昇が緩やかとなり、なお一層の低電力化を妨げる要因と考えられます。また、相変化膜の材料として、一般的に用いられるGeSbTeは、下層のシリコン酸化膜との接着性が低く、相変化メモリの製造工程中に剥離しやすいという課題への対応も必要でした。
そこで、今回、日立とルネサス テクノロジは、これらの課題の解決に向け、低電力動作と製造の安定性を同時に実現する新構造のセル技術を開発しました。
新たに開発した技術は、相変化膜とプラグの間に、極薄の五酸化タンタル界面層を形成したセル構造です。五酸化タンタルの界面層は、相変化膜からプラグを介して熱が逃げることを防ぎます。これにより、相変化膜の温度上昇が急峻となるため、融点に達するまでの電力を低減することが可能となります。
さらに、五酸化タンタル界面層は、相変化膜との接着性が良好であるという特徴を備えており、膜の剥離強度が向上します。また、この五酸化タンタル界面層の形成方法を最適化することで、ウェハ内における抵抗値のばらつき幅を抑制することも可能です。これにより、製造工程中におけるGeSbTe剥離の課題を解決するとともに、抵抗値のばらつき幅抑制を実現したことで、より安定したメモリセル製造が可能となります。
今回、相変化膜に、一般的な材料であるGeSbTeを用い、新構造の相変化メモリセルを試作したところ、電源電圧1.5Vにて、100µAの電流による書換え動作を確認しました。また、ウェハ内における抵抗値のばらつき幅が抑制され、高抵抗と低抵抗の比率が2桁で106回の書換え回数を実現しました。
本技術は、次世代の高集積オンチップ不揮発性メモリの実現を促進し、組込み機器向けマイコンの将来における一層の進展を支えるものとして期待できます。
なお、本成果は、12月11日から米国サンフランシスコで開催される電子デバイスに関する国際会議「2006 International Electron Devices Meeting」にて発表します。
用語説明
- *1
- プラグ:層間接続孔(スルーホール)に埋め込まれた金属材料。
- *2
- アモルファス状態:固体を構成する原子、分子などが、結晶のような規則性のある構造を持たない不定形の状態にあること。非晶質とも呼ばれる。
お問い合わせ先
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〒185-8601 東京都国分寺市東恋ヶ窪一丁目280番地
TEL : 042-327-7777 (ダイヤルイン)
株式会社ルネサス テクノロジ 経営企画本部 経営企画統括部 広報・宣伝部 [担当:佐藤]
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以上
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